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震災後の排泄ケアについて

被災地で活動されている助産師さんより、震災後尿漏れをする女性が増加しているとの情報が入りました。
避難所生活に関係なく、ライフラインが改善された後にも、尿漏れで悩んでいる女性がたくさんいるとのことです。
この件について、泌尿器医師より回答が寄せられたので以下に記載します。

****
「災害の避難所で尿失禁が増える」ということをこれまで(たとえばPTSDとか、エコノミークラス症候群などのようには)被災地医療をされる方のだれもきちんと調査されていないと思いますので)実態は確認していただかないといけないのですが、考えうることについてお伝えします。
ぜひ、現場にいる助産師さん、保健師さん、看護師さんにちょっと気にかけていただいてください。

女性の尿漏れ、この場合、基本的には同年代の平均と比較して十分に健康に過ごしていたという場合を中心に考えて進めます。
(脳梗塞、パーキンソンなどの神経疾患、骨盤内の手術をうけたことがある、脊椎の疾患がある、あるいは何らかのご病気で寝たきりなどの方をのぞきます)

健康な女性であっても、成人後、3-4割の方が何らかの尿失禁を経験するといわれています。これは、妊娠・出産を経験する可能性があるということ、尿道が短いという解剖的特徴などによる特性があるためで、いわゆる放置して健康に害を及ぼさないが漏れて困る、と言う状況も含めて3-4割ほどあるということになります。

尿失禁のタイプとしては、以下の4つを考えます。
1.腹圧性尿失禁
 咳、くしゃみ、あるいはジャンプや急な走り出しなど、腹腔内に力の入るような動作をしたときに漏れる状態。これは、必ずしも尿が満杯になっていないのに、力んだりすると漏れる場合をさします。特に花粉症のような連発して出るくしゃみなどの時は症状が顕著となります。
2.切迫性尿失禁
 通常、人間はぎりぎりまで尿を我慢すれば、漏れそう!という感覚が出現しますが、それほど先ほどの排尿から時間がたっていないのに、また、何となく尿意を感じる⇒段々尿意を感じる⇒普通に尿意を感じる、という段階を完全に飛ばして、あるときいきなり「漏れそう!間に合わない!」という強い尿意が出現し、それを我慢できないでトイレにかけこむものの間に合わずに漏れる状態をさします。こういう感覚を「尿意切迫感」と呼びますが、突然の突き上げるような尿意で、用事の途中でも中断しなくてはいけないくらいの感覚です。
3.溢流性尿失禁
 これは、少し特殊な漏れなのですが、もともと何らかの「尿排出障害」がある場合(例えば導尿をしなくてはいけない方は、これにあたるわけですが、それ以外にも男性なら前立腺の病気、女性では神経の病気等)で膀胱内の尿が完全に出し切れずに(残尿)どんどんたまっていき、あげくに膀胱が「過伸展」というパンパンの状態になります。これがそのまま放置されると、尿道から溢れて漏れてきます。この場合、ちゃんとした尿意はなく、完全に「知らずに漏れる」「常に少しずつだらだらと漏れている」という状況になります。
4.機能性尿失禁
 排尿をするためには、適切な時間に適切な場所で、適切な作法で排尿ができなければ社会生活が営めないので、私達は、トイレを正しく使う方法を学習しています。トイレの認知、トイレまでの移動、衣服の着脱、尿器・便器の使用、後始末といった行動が一連でできるようになっていますが、これらの運動能力や認知機能がどこか破綻して、上手にトイレが使えない場合(これは、勿論トイレ環境が悪いという場合も含みます)に起きる尿失禁は、膀胱・尿道の病気とは違いますが、排泄の問題として「機能性尿失禁」と呼んで、問題を分析します。

さて、もともとは健康的にまあまあ問題がなかった女性の場合、3と4は通常の生活ではありません。
自然に暮らしてきて、年を重ねて起きるのは、1か2です。

で、1の場合、主には、ご出産のあとから始まることが圧倒的です。これは、出産(多くは経膣分娩)という大きな仕事が膀胱や尿道を支える筋肉(骨盤底筋と呼びます)が緩んでおきる状態です。
出産直後からかなりの尿漏れの場合もありますが、一度出産後尿漏れが改善したものの、年齢を重ねるなかで少しずつ漏れが目立ってくるということが多いのが特徴です。
20代は良かったが、この数年段々と少しの腹圧で漏れるようになってきた、というようにです。
先に少し書いたように、突然この漏れが目立つようになるとしたら、咳なりくしゃみなり、腹圧のかかるような動作が突然増えた場合でしょう。
つまり、あるときから突然花粉症になったとか、ほこりの多いところで生活するようになったとか、あるいは喘息発作が出るようになったなど。
これは、強い腹圧が常におきやすいということによるので、それ以外、よほど重いものを持つような仕事を突然はじめたとか、強い運動をいきなり始めた、以外ではある時点から突然というのは考えにくいのです。
ただ、この症状は、痛みや不快感がない、というのが特徴ですので、「単に自分がだらしない」というように思い込んでしまって、健康障害として口にしていないだけかも知れません。もし、実は前から症状に悩んでいたのだが、例えば助産師さんのように健康不安を聞いてくれる人と接触するようになったので表に出たというのであれば問題はないと思います。
しかしながら、そうではなくて、仮にもともと少し漏れていたかもしれないけど、震災以降、「以前はこんなにひどくなかったのに」と言う場合は、後で述べる膀胱尿道の疾患が隠れている可能性があります。

2の切迫性尿失禁も基本的には、「○年くらい前から少し尿が近いと思っていたけど、最近は我慢できずに漏れるようになってきた」という、徐々に症状が強くなってくるというのが一般的です。ただ、たとえば寒いときに、とか冷たい水をさわる、冷たい風に突然当たる(食品冷凍庫のあるところで働くなど)など、季節や環境で症状にかなりの波が見られることはあります。今回のように被災地で寒いので、ということは確かにあるとは思います。
 ただ、この症状は、膀胱に何らかの病気があると、あるときから突然に目立つようになる、ということがありえるので、注意が必要です。
 基本的には1よりも、こちらの2のほうが「あるときから突然始まった」ということが起きる可能性が高いと思います。
 この症状を起こす膀胱の疾患としては(女性では)まず圧倒的に「膀胱炎」を考えるべきでしょう。
 これ以外には「膀胱腫瘍」や「膀胱結石」「尿管結石(が、膀胱の近くに下りてきた場合)」もありますが、これらは、震災をきっかけにできる病気ではないので、実は以前からそれなりに症状があって、震災と前後して悪化したということですし、いくらなんでも、一定の地域に(例えば前述の腹圧性尿失禁のように)頻度が高いということはありえないと思います。
 
勿論、1にしても、2にしても、非常に精神的に辛い経験をした場合に突然起きることもあります。
家でぼやを出した、という患者さんが、突然尿失禁が始まったといってこられることはありました。子供が火を見るとおねしょするなどとも言いますよね。
今回の被災は、特にご自分自身の体験もかなりお辛かっただろうし、家族や知人、地域全体を考えてもものすごい精神的な負担をしょっている方が多いと思います。当然疲労や睡眠不足、そして、冷えなども重なりますので、尿失禁が表面化しても無理はないのかも知れません。
ちなみに、感情がコントロールできずに突然泣き出したりすることを「感情失禁」と呼ぶことがあります。

ただ、よく我々が遭遇するのは、確かにご本人が「精神的なものだとは思うのですが」といって尿失禁について診察にこられても、実は隠れた膀胱炎やその他の疾患が見つかることはよくあるという場面です。

被災して避難所にいたり、ライフラインが回復していない中で生活していると、当然トイレの環境が非常に悪い、寒い、栄養状態も低下する等々、膀胱炎になりやすい条件はかなりそろっています。
膀胱炎なら、排尿するときの痛みがあるのではと思いがちですが、痛くないのに膀胱炎と言うことも実はあるのです。
尿漏れで始まる膀胱炎もあるんですよ。

ですので、ぜひ、助産師の方(あるいは、看護師、保健師の方もですが)に伝えてほしいのは、上記のように、お話を聞いて、震災後、ある日から突然に尿漏れが目立つようになったという訴えの方にはぜひ、尿検査をなんとかしていただきたいという点です。
とはいえ、検査室がそれほどあるわけではないと思いますが、尿に浸して血液が出ている、感染をしている、などを判断する「テステープ」というのは、医療機関と相談すればなんとか手に入る可能性があります。臨床検査の方となんとか連絡をとっていただいて、検尿カップと、このテープだけで最低限いいので、チェックをしてあげるのが必要ではないかと思います。
テステープ、ウロテープ等の名称で製品がありますが、膀胱炎の場合の診断のヒントになる「白血球」のチェックできるものがいいでしょう。
本来は、尿を個別に遠心分離して診断するのが正式なのですが、救急と考えればこれでもある程度わかります。
もし、白血球があり、という診断なら、病院受診をして、抗生剤を服用することを早急に考えるべき状況です。
こじらすと大変ですので。
勿論、生理でもないのに、血尿が強いという場合も、早めに病院で相談するのが望ましいです。

もう一点。

仮設トイレ、簡易トイレ等が不足しているので、かなりぎりぎりまでトイレを我慢するために、現実問題としていつもは漏れない方が少し漏れるという状況になる可能性があります(前述の機能性尿失禁と実はおなじことなのですが)。その場合、着替えや入浴もままならない、ということで、下着の中に何か当て物をしよう、と考えるのは女性では普通にあることと思います。
で、このときに、尿が少し漏れるのに、生理用のナプキンを使っている方の場合、要注意です。
生理用ナプキンは、月経血は吸収しますが尿は吸収しません。
べたべたするだけです。
この状態で、外漏れはないからいい、と我慢していると、常に尿が皮膚に当たっていることになります。
通常であればこまめに入浴してそのべたべたを洗うことができますが、それも難しいと、尿による会陰部の皮膚、粘膜のかぶれが考えられます。
これが続くと、さらに尿道や膀胱の感染が起きる可能性が出てきます。
そうなると、先に述べたように、膀胱炎による尿漏れというのもあるわけです。

もし、あてるのなら、「軽失禁用パッド」や「尿ケア製品」と呼ばれる専用品が望ましいです。また、それが入手できなければまだ、さらし木綿の布や、小さいタオルのほうが肌にはやさしいです。勿論洗う問題がありますが、生理用ナプキンを尿漏れに使うのは症状の悪循環になりますので、ご注意ください。
****

ストレスからくる切迫性尿失禁・腹圧性尿失禁以外にも、膀胱炎を起こしていないかを気をつけないといけないのですね。特に、尿失禁の場合生理用ナプキンを使っていけないというのは目からうろこでした。
女性のからだは敏感なもの。からだの変調を調整できるようにこのような情報を使っていただければと思います。
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プロフィール

SANEjun

Author:SANEjun
2007年SANE(性暴力被害者支援看護師)研修終了。2008年エセナ5女性への性暴力防止のための5回連続講座医療担当。性暴力被害者支援のための活動を行っています

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